American Idiot -- Rock Opera
開演ぎりぎりに飛び込んだAmerican Idiot。
地元出身のGreen Dayのグラミー賞受賞アルバムの舞台化、Spring Awakeningの演出家、Next To Normalの作曲家が音楽監督を務め、Spring Awakeningでトニー賞助演男優賞受賞の俳優が主役、と鳴り物入りでBerkeley Repのチケットセールス記録を更新した舞台、否が応でも期待は募る。
最近は音楽に疎いので、Green Dayの存在すらしらず(笑)、観劇前に一応CDを聞いておこう、と図書館から借りた(笑)のだけれど、パンクロックのカテゴリーらしいけど、好みだった。
実は日本で貸しレコード屋(懐かしい響き)でバイトしていたとき、イギリスからのパンクロックとかはやっていた時期で、この手の音楽は一杯聞いていて、ディビッド・ボーイのコンサートにも行っていた、実はヘッドバンガーだったのだ(>ウソ)。だから聞いてみると、このノリは好きだよう、とまずつかみはOKになった。
私は初日が明けて数日後の公演を見に行ったのだけれど、プレビューを見に行った人たちからは、「嫌いじゃないけど、ものすごく気に入ったというわけでもない」という、でも「可もなく不可もない」という意味ではない報告が入ってきていた。かなり期待度が高い作品なのにこの生ぬるい反応はどういうことだろう、と実際に見に行ってみて・・・・
短絡的にまとめてみると、私的にはこんな感じになる。
American IdiotはリバースMovin' Outだ!
わー、すごい大雑把。
これでレポ終了したら、怒られるだろうな~(笑)。
いや、マジな話、このコンセプトを頭に入れて観劇するのとしないのとでは、感じ方がかなり変わってくると思うよ。
これじゃあまりにも不親切なので、もう少し解説すると、先述のようにこの作品は既成のCDを舞台化したものであって、この舞台のために書かれた曲はひとつもない(未発表曲が含まれているものの、舞台のために改めて書かれたわけではない)けれど、いわゆるジュークボックスミュージカルとも違う。
プログラムの中に書かれているように、もともとこのCDはALWのJesus Christ SuperstarやThe WhoのTommyのようなロックオペラコンセプトアルバム、のような感じで作られたもので、登場人物とか物語とか、一貫している。
ただその物語が、あまりにもありがちで、薄っぺらなのがこの舞台の最大のウィークポイントなのだ。
あらすじ、なんて書くまでもないのだけれど、まあこんなかんじ(舞台版のあらすじね、CDとは登場人物が少し増えてます、もちろん含ネタバレ)。
アメリカのとあるサバービア(郊外)で暮らしているロック仲間は定職もなく、生きがいもなく、仲間とセブンイレブンの駐車場でたむろってビールを飲んだり騒ぎを起こしたりする毎日だったが、JohnnyとTunnyは都会に出てロックバンドを結成するぜ!と意気揚々と故郷を離れていく。もう一人のロック仲間のWillも一緒に行きたかったのだが、ガールフレンドが妊娠してしまい、そのままサバービアに残る。
都会にでたJohnnyは夢を成就することもなく、ドラッグに溺れていき、Tunnyは非日常性を求めて軍隊に志願してしまい、戦場で負傷して帰国する。その間Willはソファーで飲んだくれ、マリファナ漬けでガールフレンドにも愛想をつかされて、なんの進歩もない。American Idiotになりたくない、とサバービア脱出を試みたのに、結局最後にはまたサバービアに戻ってくる、行き場のない若者たち・・・
ね?なんのひねりもないでしょ~?(笑)
でもって、この作品の表現したいものはなにか、って演出家のMike Mayerが聞かれたとき「若者の困惑(不安)と愛」(angst and love)って答えたんだけど、私は「愛だと~?!」と拍子抜けしてしまった。
だって愛、のようなものが感じられるのはたった2シーンしかないし、全編に渡って愛がテーマってことでもないもの。
まあ百歩譲ってこの物語の薄っぺらさに目をつぶったとしよう。
それでも最大の致命傷はキャラクターの深みのなさだと思おう。
3人の誰とも共感を感じられない、3つのキャラのひとつも魅力を感じない、Spring Awakeningとは違い、主な登場人物が少なすぎて(アンサンブルは多いのに)、短くてもパンチの効いたサブプロットも生まれてこない、という非常に世界観が狭い作品で退屈になる。
ここまで辛らつに書いてきて、じゃ、私にはこの作品を受け付けられなかったか?というと、
不思議なことにそうではない。なぜなら見ている間に
American IdiotはリバースMovin' Outだ!
というコンセプトが浮かび上がって、舞台で物語を追うというよりパフォーマンスを楽しもう、というモードに切り替えられたからだ。
この作品は全編ほぼ歌でつづられていてセリフはほとんどなく、最初に発せられるセリフは開幕してのっけから3曲続けてロックナンバーが歌われた後だ。この3曲の間私はすでに「あ、この舞台私はダメかも」とリタイヤしたくなった(笑)。
先述したように、どのキャラにも共感できないし、魅力があるとも思えない。バンドは舞台上の上にいて、ロックコンサートなみの大音響なんだけど、これはミュージカルでしょ、コンサートバージョンを見に来たんじゃないよといいたくなるほどダンスの振り付けもヘッドバンギングの変形のみという印象で、自分の中で期待と興奮がさーっと引いていくのが感じられた。
舞台の真ん中で起こっていることに集中しきれない眼は、否が応でも舞台の中心部以外を彷徨う(笑)。幕が開いて最初に目に付くのは、バックグラウンド(打ちっぱなしのコンクリートでインダストリアル風で、ビル3階建てぐらいありそうな高さ)にはめ込まれた、大小いろいろな形のモニター15個ぐらい。舞台上手奥にはバックグラウンドに沿って、鉄製の階段がニョキニョキと伸び、2階と3階の踊り場みたいなところにも、バンドメンバーが座っている。舞台下手頭上には、前半分だけのアメ車が宙吊りになっていて、これは最後までなんのためにこの車が置かれているのかよくわからず。舞台上下手にはWillがいっつも座っているソファ、真ん中には移動するベッドなどが配置されている。舞台奥にはWCへのドア(笑)。
もちろんこのモニターは各ナンバーでいろいろ活躍するのだけれど、モニターに映るプロジェクションだけではなく、照明によるプロジェクションの移り変わりもめまぐるしい。でも実はこれが演劇的効果として作品を文字通り助けていると思った。
3曲が終わってリタイヤしたくなった私は、プレビューを見てきて「この作品はMovin' Outみたいなもんだ」といった人の言葉を思い出した。そういわれてみれば、いわゆるジュークボックス系だし、物語性も薄く、しかもセリフがほとんどない。でも私はあえて「リバース(反対)」といいたいのは、Movin' Outはバンドマンのボーカルの一人が全曲歌って、舞台上ではダンサーが(俳優ではない)ナンバーにあわせて踊る、というものだけれど、AIはバンドは演奏とバックコーラスのみで、それぞれのナンバーは俳優が歌い、振り付けといえるほどのダンスナンバーはないからだ。
でもMovin' Outのようなミュージカル(と呼んでもいいっしょ)が好きだった人には、AIは受け入れやすい作品だと思う。とにかく物語を舞台の中で追う、ということをせず、各場面、場面の「パフォーマンス」を楽しめばいいからだ。
それを悟った(笑)後は、私は俄然乗ることができ、「を!このプロジェクションいいじゃん」とか「やられた、こんな演出になるとは思いつかなんだ~」と楽しむことができた。
とくに好きな場面はJohnnyの歌うBoulevard of Broken DreamsとFavorite Son。前者はJohnnyがギターを弾き語りしながら、都会のシルエットがプロジェクションで影のように映し出される、という演出で「これはJ. Gallagher Jr.のファンは感涙もんだろうなぁ」と思ったり(笑)、後者は(ここのネタバレはしないほうがいいから詳しくは書かないけど)鮮やかな演出と、ガールズたちの衣装の色に「そうだったのか~」と後で納得(一緒に行った友人は私が言うまで衣装のことは気が付かなかった・笑)したほどだ。
ほかにもAre We The Waiting, Letterbomb, Wake Me Up When September Endsなどいいナンバーがあったけれど、ざわっと鳥肌がたったのはGive Me NovacatineというWillとTunnyが別々のシチュエーションで歌うナンバーで、例のモニターには最初緑の背景しか映っていないのだけれど、次第にTunnyの軍隊のユニットが戦闘線に入っていくと、その緑の背景は実はイラクにミサイル発射していたニュース番組で放映されていた本物の映像だということがわかっていく。
ところで、キャラに全然共感できず魅力がない、と書いたけれど、実は一人ダントツで後光が差している位抜群に光っている人がいた。
Johnnyのalter ego(別人格)であるSt. Jimmyを演じるTony Vincentである。
彼はもともとロックシンガーで、ブロードウェイ版のJCSのユダを演じたり、ウエストエンドでWe Will Rock Youに出演したことがある。その彼がカリスマ的St. Jimmyとして登場するとき、ものすごく求心力を発揮して、観客をぐいぐいひきつけて放さない。もう色気とカリスマオーラが体中から立ち上っているかのような、錯覚さえ引き起こすほどなスーパースターぶりで、一番興奮したシーンだ。この人を見るためにだけ、もう一度観劇してもいいぐらい、ノックアウトされた(笑)。
St. Jimmyになるためのメイクもヘアスタイルもばっちり。だけどものすご~~~~く痩せちゃって、「だ、大丈夫?」と言いたくなる位で、これは役作りのためだと思いたい。
と、まあかなり長いレポになったけれど(笑)、この作品は好き嫌いに分かれるかもしれないと思う。案の定RentやSpring Awakeningと比べる人たちもいて、そういう物語がしっかりしているミュージカルが好きな人にはオススメできない。もっと脚本を掘り下げるべきだ~、なんて間違った指摘をしかねない。というのも、もともとロックオペラというコンセプトで作られたCDの舞台化、なんだからそのパフォーマンスを楽しむ、という気持ちで観劇に臨まないとイライラしたままカーテンコールになりかねないからだ。
この作品が受け入れられなかった人は、ブロードウェイにこのまま持っていくのはどうか、という。私はTharpの第二弾(またの名を大フロップ)のTimes That They Are A-Changin'も観ているけれど、あれに比べたら、かなりいいと思うし、同行した友人はプレブロードウェイのThe First Wives Clubを観ているけれど「ストーリー(原作)があるTFWCよりもストーリーがペラペラなAIのほうが断然いい!」とまでいっていた。あ、でもGreen DayのCDは前もって聞いておいたほうが良し。歌詞が気が利いているけど、生じゃすごく聞き取りにくいからね。
さて締めくくりにもう一度おさらいしてみよう。リピートアフターミー
American IdiotはリバースMovin' Outだ!
お後がよろしいようで~
地元出身のGreen Dayのグラミー賞受賞アルバムの舞台化、Spring Awakeningの演出家、Next To Normalの作曲家が音楽監督を務め、Spring Awakeningでトニー賞助演男優賞受賞の俳優が主役、と鳴り物入りでBerkeley Repのチケットセールス記録を更新した舞台、否が応でも期待は募る。
最近は音楽に疎いので、Green Dayの存在すらしらず(笑)、観劇前に一応CDを聞いておこう、と図書館から借りた(笑)のだけれど、パンクロックのカテゴリーらしいけど、好みだった。
実は日本で貸しレコード屋(懐かしい響き)でバイトしていたとき、イギリスからのパンクロックとかはやっていた時期で、この手の音楽は一杯聞いていて、ディビッド・ボーイのコンサートにも行っていた、実はヘッドバンガーだったのだ(>ウソ)。だから聞いてみると、このノリは好きだよう、とまずつかみはOKになった。
私は初日が明けて数日後の公演を見に行ったのだけれど、プレビューを見に行った人たちからは、「嫌いじゃないけど、ものすごく気に入ったというわけでもない」という、でも「可もなく不可もない」という意味ではない報告が入ってきていた。かなり期待度が高い作品なのにこの生ぬるい反応はどういうことだろう、と実際に見に行ってみて・・・・
短絡的にまとめてみると、私的にはこんな感じになる。
わー、すごい大雑把。
これでレポ終了したら、怒られるだろうな~(笑)。
いや、マジな話、このコンセプトを頭に入れて観劇するのとしないのとでは、感じ方がかなり変わってくると思うよ。
これじゃあまりにも不親切なので、もう少し解説すると、先述のようにこの作品は既成のCDを舞台化したものであって、この舞台のために書かれた曲はひとつもない(未発表曲が含まれているものの、舞台のために改めて書かれたわけではない)けれど、いわゆるジュークボックスミュージカルとも違う。
プログラムの中に書かれているように、もともとこのCDはALWのJesus Christ SuperstarやThe WhoのTommyのようなロックオペラコンセプトアルバム、のような感じで作られたもので、登場人物とか物語とか、一貫している。
ただその物語が、あまりにもありがちで、薄っぺらなのがこの舞台の最大のウィークポイントなのだ。
あらすじ、なんて書くまでもないのだけれど、まあこんなかんじ(舞台版のあらすじね、CDとは登場人物が少し増えてます、もちろん含ネタバレ)。
アメリカのとあるサバービア(郊外)で暮らしているロック仲間は定職もなく、生きがいもなく、仲間とセブンイレブンの駐車場でたむろってビールを飲んだり騒ぎを起こしたりする毎日だったが、JohnnyとTunnyは都会に出てロックバンドを結成するぜ!と意気揚々と故郷を離れていく。もう一人のロック仲間のWillも一緒に行きたかったのだが、ガールフレンドが妊娠してしまい、そのままサバービアに残る。
都会にでたJohnnyは夢を成就することもなく、ドラッグに溺れていき、Tunnyは非日常性を求めて軍隊に志願してしまい、戦場で負傷して帰国する。その間Willはソファーで飲んだくれ、マリファナ漬けでガールフレンドにも愛想をつかされて、なんの進歩もない。American Idiotになりたくない、とサバービア脱出を試みたのに、結局最後にはまたサバービアに戻ってくる、行き場のない若者たち・・・
ね?なんのひねりもないでしょ~?(笑)
でもって、この作品の表現したいものはなにか、って演出家のMike Mayerが聞かれたとき「若者の困惑(不安)と愛」(angst and love)って答えたんだけど、私は「愛だと~?!」と拍子抜けしてしまった。
だって愛、のようなものが感じられるのはたった2シーンしかないし、全編に渡って愛がテーマってことでもないもの。
まあ百歩譲ってこの物語の薄っぺらさに目をつぶったとしよう。
それでも最大の致命傷はキャラクターの深みのなさだと思おう。
3人の誰とも共感を感じられない、3つのキャラのひとつも魅力を感じない、Spring Awakeningとは違い、主な登場人物が少なすぎて(アンサンブルは多いのに)、短くてもパンチの効いたサブプロットも生まれてこない、という非常に世界観が狭い作品で退屈になる。
ここまで辛らつに書いてきて、じゃ、私にはこの作品を受け付けられなかったか?というと、
不思議なことにそうではない。なぜなら見ている間に
というコンセプトが浮かび上がって、舞台で物語を追うというよりパフォーマンスを楽しもう、というモードに切り替えられたからだ。
この作品は全編ほぼ歌でつづられていてセリフはほとんどなく、最初に発せられるセリフは開幕してのっけから3曲続けてロックナンバーが歌われた後だ。この3曲の間私はすでに「あ、この舞台私はダメかも」とリタイヤしたくなった(笑)。
先述したように、どのキャラにも共感できないし、魅力があるとも思えない。バンドは舞台上の上にいて、ロックコンサートなみの大音響なんだけど、これはミュージカルでしょ、コンサートバージョンを見に来たんじゃないよといいたくなるほどダンスの振り付けもヘッドバンギングの変形のみという印象で、自分の中で期待と興奮がさーっと引いていくのが感じられた。
舞台の真ん中で起こっていることに集中しきれない眼は、否が応でも舞台の中心部以外を彷徨う(笑)。幕が開いて最初に目に付くのは、バックグラウンド(打ちっぱなしのコンクリートでインダストリアル風で、ビル3階建てぐらいありそうな高さ)にはめ込まれた、大小いろいろな形のモニター15個ぐらい。舞台上手奥にはバックグラウンドに沿って、鉄製の階段がニョキニョキと伸び、2階と3階の踊り場みたいなところにも、バンドメンバーが座っている。舞台下手頭上には、前半分だけのアメ車が宙吊りになっていて、これは最後までなんのためにこの車が置かれているのかよくわからず。舞台上下手にはWillがいっつも座っているソファ、真ん中には移動するベッドなどが配置されている。舞台奥にはWCへのドア(笑)。
もちろんこのモニターは各ナンバーでいろいろ活躍するのだけれど、モニターに映るプロジェクションだけではなく、照明によるプロジェクションの移り変わりもめまぐるしい。でも実はこれが演劇的効果として作品を文字通り助けていると思った。
3曲が終わってリタイヤしたくなった私は、プレビューを見てきて「この作品はMovin' Outみたいなもんだ」といった人の言葉を思い出した。そういわれてみれば、いわゆるジュークボックス系だし、物語性も薄く、しかもセリフがほとんどない。でも私はあえて「リバース(反対)」といいたいのは、Movin' Outはバンドマンのボーカルの一人が全曲歌って、舞台上ではダンサーが(俳優ではない)ナンバーにあわせて踊る、というものだけれど、AIはバンドは演奏とバックコーラスのみで、それぞれのナンバーは俳優が歌い、振り付けといえるほどのダンスナンバーはないからだ。
でもMovin' Outのようなミュージカル(と呼んでもいいっしょ)が好きだった人には、AIは受け入れやすい作品だと思う。とにかく物語を舞台の中で追う、ということをせず、各場面、場面の「パフォーマンス」を楽しめばいいからだ。
それを悟った(笑)後は、私は俄然乗ることができ、「を!このプロジェクションいいじゃん」とか「やられた、こんな演出になるとは思いつかなんだ~」と楽しむことができた。
とくに好きな場面はJohnnyの歌うBoulevard of Broken DreamsとFavorite Son。前者はJohnnyがギターを弾き語りしながら、都会のシルエットがプロジェクションで影のように映し出される、という演出で「これはJ. Gallagher Jr.のファンは感涙もんだろうなぁ」と思ったり(笑)、後者は(ここのネタバレはしないほうがいいから詳しくは書かないけど)鮮やかな演出と、ガールズたちの衣装の色に「そうだったのか~」と後で納得(一緒に行った友人は私が言うまで衣装のことは気が付かなかった・笑)したほどだ。
ほかにもAre We The Waiting, Letterbomb, Wake Me Up When September Endsなどいいナンバーがあったけれど、ざわっと鳥肌がたったのはGive Me NovacatineというWillとTunnyが別々のシチュエーションで歌うナンバーで、例のモニターには最初緑の背景しか映っていないのだけれど、次第にTunnyの軍隊のユニットが戦闘線に入っていくと、その緑の背景は実はイラクにミサイル発射していたニュース番組で放映されていた本物の映像だということがわかっていく。
ところで、キャラに全然共感できず魅力がない、と書いたけれど、実は一人ダントツで後光が差している位抜群に光っている人がいた。
Johnnyのalter ego(別人格)であるSt. Jimmyを演じるTony Vincentである。
彼はもともとロックシンガーで、ブロードウェイ版のJCSのユダを演じたり、ウエストエンドでWe Will Rock Youに出演したことがある。その彼がカリスマ的St. Jimmyとして登場するとき、ものすごく求心力を発揮して、観客をぐいぐいひきつけて放さない。もう色気とカリスマオーラが体中から立ち上っているかのような、錯覚さえ引き起こすほどなスーパースターぶりで、一番興奮したシーンだ。この人を見るためにだけ、もう一度観劇してもいいぐらい、ノックアウトされた(笑)。
St. Jimmyになるためのメイクもヘアスタイルもばっちり。だけどものすご~~~~く痩せちゃって、「だ、大丈夫?」と言いたくなる位で、これは役作りのためだと思いたい。
と、まあかなり長いレポになったけれど(笑)、この作品は好き嫌いに分かれるかもしれないと思う。案の定RentやSpring Awakeningと比べる人たちもいて、そういう物語がしっかりしているミュージカルが好きな人にはオススメできない。もっと脚本を掘り下げるべきだ~、なんて間違った指摘をしかねない。というのも、もともとロックオペラというコンセプトで作られたCDの舞台化、なんだからそのパフォーマンスを楽しむ、という気持ちで観劇に臨まないとイライラしたままカーテンコールになりかねないからだ。
この作品が受け入れられなかった人は、ブロードウェイにこのまま持っていくのはどうか、という。私はTharpの第二弾(またの名を大フロップ)のTimes That They Are A-Changin'も観ているけれど、あれに比べたら、かなりいいと思うし、同行した友人はプレブロードウェイのThe First Wives Clubを観ているけれど「ストーリー(原作)があるTFWCよりもストーリーがペラペラなAIのほうが断然いい!」とまでいっていた。あ、でもGreen DayのCDは前もって聞いておいたほうが良し。歌詞が気が利いているけど、生じゃすごく聞き取りにくいからね。
さて締めくくりにもう一度おさらいしてみよう。リピートアフターミー
お後がよろしいようで~
by quast
| 2009-10-07 14:00
| 観劇レポート
|
Comments(8)
クワストさんがこの作品を「AI」って略されてた時につい、オスメント坊や主演のロボット映画のミュージカル化?って大きな勘違いをしてしまってました。
Green Dayってバンドもよく知らないし、あらすじを聞いただけで「もうアウト!!」って思ったのですが、トニー・ビンセントが出演というと話は違ってきますね(笑)
どんなだめんずが集団で出てこようと、一人のスターが出てくるだけで作品の印象は変わると思います。
機会があれば(トニー・ビンセント出演が前提で)観てみたいです。
Green Dayってバンドもよく知らないし、あらすじを聞いただけで「もうアウト!!」って思ったのですが、トニー・ビンセントが出演というと話は違ってきますね(笑)
どんなだめんずが集団で出てこようと、一人のスターが出てくるだけで作品の印象は変わると思います。
機会があれば(トニー・ビンセント出演が前提で)観てみたいです。
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quast at 2009-10-08 00:15
>かなかなさん、
だめんず~!!(笑)そうなの、Johnnyなんかマジで「今日はまだシャワー浴びてないでしょ?!」っていいたくなるほどヨレヨレ。だからトニーが余計光るのかも。もしブロードウェイに上がったらトニーはマジで助演男優賞にノミネートされるんじゃないか、ぐらいインパクトありです。
あ、AIはどちらかというと映画よりもAmerican Idolに間違えられやすいですね(笑)。
だめんず~!!(笑)そうなの、Johnnyなんかマジで「今日はまだシャワー浴びてないでしょ?!」っていいたくなるほどヨレヨレ。だからトニーが余計光るのかも。もしブロードウェイに上がったらトニーはマジで助演男優賞にノミネートされるんじゃないか、ぐらいインパクトありです。
あ、AIはどちらかというと映画よりもAmerican Idolに間違えられやすいですね(笑)。
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etsu
at 2009-10-11 22:01
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お久しぶりです。AIがどんなもんかCDを聞き込んでいくと完成度が高いだけにミュージカル化はどうよ!?と思ったのですが、レビューを読んで納得。なるほどそうですかぁ~(笑)でも私も大のTonyファンなので彼がでているのなら見ますわ♪B'wayにこないかなぁ。。。
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quast at 2009-10-12 00:24
>etsuさんってあのレントのファンの方ですか?ほんとお久しぶり!
ブロードウェイへのトランスファーは舞台に見合った劇場が空いているか、否かによるかもしれませんね。今シーズンはかなり新作・リバイバルが多いのでそれらのうちのどれかがポシャらないと(笑)今シーズン中は難しいかも。でもトランスファーしたからといって、NYの批評家に受けるかどうかっていうのも難しいと思います。
ブロードウェイへのトランスファーは舞台に見合った劇場が空いているか、否かによるかもしれませんね。今シーズンはかなり新作・リバイバルが多いのでそれらのうちのどれかがポシャらないと(笑)今シーズン中は難しいかも。でもトランスファーしたからといって、NYの批評家に受けるかどうかっていうのも難しいと思います。
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アキーム
at 2009-11-06 02:14
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ま! なんて詳しいレポート!
すっかり出遅れてしまいましたが、レポートありがとうございます。
そうなんですか、「リバースMovin' Out」なのですか。とってもわかりやすいなー。
Tony Vincentの舞台はたぶん見たことがないっす。
これ読んで、「彼が見たいぞ〜」と、スケベ心が出てきました。えへへ。
すっかり出遅れてしまいましたが、レポートありがとうございます。
そうなんですか、「リバースMovin' Out」なのですか。とってもわかりやすいなー。
Tony Vincentの舞台はたぶん見たことがないっす。
これ読んで、「彼が見たいぞ〜」と、スケベ心が出てきました。えへへ。
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quast at 2009-11-08 09:10
>アキームさん、そう、リバースMOを念頭に観劇したら乗れますよん。GGはもうご覧になられたのでしょうか?私は来週です!
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at 2009-11-08 19:49
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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quast at 2009-11-09 10:55