もうひとつのGrey Gardens
今年はリージョナルシアター観劇強化年間なので、いつもならパスしてしまうTheatre WorksのGrey Gardensを観に行ってきた。往復5時間ぐらいかかって、オシリが痛い!(笑)
いや、いつもならパスしてしまうと書いたものの、Theatre Worksが今シーズンを発表してGrey Gardensが入っていたことを知るやいなや、TW行きはすでに決まっていたようなものだ。だってブロードウェイクローズ後のリージョナルプレミアの公演なんだし。
観劇のお供は同僚であり、友人であるMさん。
彼女とは誕生日が近いので、お互いの誕生日プレゼントは舞台のチケット、というのがここ数年恒例になっていて、彼女とはスペリングビーをSFまで観にいったり、地元でL5Yを観たり、Jersey Boysがツアーできたときも一緒に観たり、そうそうBig Riverも一緒にみてタイに紹介したんだった(笑)。
彼女とはすごくウマが会うし、しかもオフィスではお互い忙しくなかなかゆっくりしゃべる暇がないので、道中の5時間二人はしゃべりっぱなし。せっかくGGのCDを持っていって、物語の説明をしながら聴こうと思ったけど、無理無理。
結果は開演10分前ギリギリについて、トイレに行きながら(笑)作品のプロットをちょろっとしゃべっただけで、Mさんは観劇に望むことになってしまった。
観客席に入ると、そこにはブロードウェイと同じようにGrey Gardensの外観が緞帳がわりに舞台にあって、「をを、TWもがんばってるね、まさかブロードウェイからセットを借りてきたとは思えないし」と感激。
プロローグでLittle Edieの声が聞こえるのだけれど、これがChristine Eversoleそっくり。いや、Christineは実在のLittle Edieに似せたのだろうから、Christineそっくりといっては語弊があるだろう。
外観はブロードウェイのセットとそっくりだけれど、やはり舞台はTWの方が狭いため(特に2幕目のセットが舞台の奥にしまわれていると思われるので、奥行きがない)、2階へと続く階段がかなりはしょられていた。2幕目のセットはほぼ寝室でのシーンが多いため、ブロードウェイ版と同じようだったけれど、プロジェクションはほとんど使わず、キャットフードのあき缶の山、とか観えないので、そんなにたくさん野良猫が住み着いているようには感じられなかった。
演出もブロードウェイ版をほとんどなぞっているといっていいだろう。これには賛否両論があるかもしれないけれど、私はそれでいいと思う。リージョナル公演とはいえ、R&Hやソンドハイム、ウエバーのように何度も上演されているなじみの作品ではないのだし、TWのサブスクライバーでブロードウェイ版を見ている人は10%いるかいないか、だと思うからなにも無理して演出を変えることはない。
ただこれだけは譲れないのは二幕でのLittle Edieの衣装の奇抜さでしょう。
「どうしちゃったの?」と一瞬で思わせる、それこそRevolutionary Costumeでないと、変わり果てたLittle Edieの精神のアンバランスさを観客の意識化に浸透させることは無理。
それなのにセットにお金を掛けすぎちゃったのか(笑)、この肝心の衣装が、ブロードウェイ版に似てはいるんだけど、Close but not cigarで「????」と思わせるほどでもなかった。だからRevolutionary Costume for Todayもほとんど笑いが取れないし、まあプログラムに書いてある解説を熟読していなかったら、一幕でBig Edieを演じていた人が二幕ではLittle Edieなんてよくわからないから、普通の観客は混乱したまま二幕に突入してしまうことは避けられない。
Little Edieが新聞の記事を読む場面で、自分のことをBody Beautifulと言われていた、というところでやっと観客は「え、この人はLittle Edieってこと?」て察するけれど、肝心なこの部分で活舌があまりよくなかったのか(私はちゃんと聞こえたけど)、後ろに座っていた老婦人がでかい声で(笑)「何を言っているのか全然聞こえないわ」といったので「自分が聞こえないからって、周りの人を巻き添えにしないでくれ~」と心の中で言っていた(笑)。
キャストもTWの公演だから粒が揃ってはいる。Beth Glover(この人をAll Shook Upの国内ツアーで観たことあるらしいが覚えていない)がBig Edie/Little Edieを演じていて、彼女は一幕目の方が二幕目よりしっくりしていたと思う。Big Edieが夫からの電報で、自分の華麗なる社交生活は終わった、と悟って、娘の婚約を破棄にさせようと策略するところは、ブロードウェイ版ほどはっかりわからないので、観客はいぶかしく思ったに違いない。
二幕目のBig EdieはDale Soulesが演じていて、彼女はブロードウェイ版でアンダースタディをしていたから、役にしっくりしていた。
Little EdieはElisa Van Duyneで、Erin Davieのお人形のような可憐さ、はかなさはそれほどなかったけれど、歌は安定していた。相手役のJoe Kennedy Jr/Jerryを演じるNicholas Galbraithは二幕目ののらりくらりのJerryはとてもよかったけれど、上流階級のKennedyを演じるにはノーブルさが足りなかった。
George Gould Strongを演じたMichael Wintherは、ブロードウェイのGouldよりゲイさが足りなくて(笑)、歌はよかったけれどBig Edieとのプラトニックな関係が明確にでなかった。
と、まあマイナス点が多い公演だったけれど、友人のMさんはいたく感動してくれてよかったし、彼女はドキュメンタリーもみたい、なんていっていた。それになにより、こういう玄人向けっぽい作品をあえて上演しようという心意気はものすごく評価したい(実際にチケットの売り上げはおもったほどではないようだ)
実はこの公演を見る前に、Christine Evesoleの出ていないGGってどんなだろう、と不安だった。というのももう業界ではCE=GGみたいな位置づけだったからだ。観終わった後に、Christineがいなかったとしても作品としては十分成立する、でも作品が成功するには二幕目の冒頭のナンバーがガッツンと決められる女優が必要だと思う。一幕目で観客がうっすらと感じたLittle Edieのアンバランスなところが、二幕目では思いっきりデフォルメされて出てくるのだから、この精神を病んだ人々の話が求心力をもつには、Revolutionary Costumeのナンバーが面白いお笑いナンバーだけでなく、観客の心をざわつかせるプレゼンテーションになる必要があると思った。(それをChristineがやってのけたから、玄人には受けたのだろう)
オマケ Christine Eversoleのトニー賞でのパフォーマンス
いや、いつもならパスしてしまうと書いたものの、Theatre Worksが今シーズンを発表してGrey Gardensが入っていたことを知るやいなや、TW行きはすでに決まっていたようなものだ。だってブロードウェイクローズ後のリージョナルプレミアの公演なんだし。
観劇のお供は同僚であり、友人であるMさん。
彼女とは誕生日が近いので、お互いの誕生日プレゼントは舞台のチケット、というのがここ数年恒例になっていて、彼女とはスペリングビーをSFまで観にいったり、地元でL5Yを観たり、Jersey Boysがツアーできたときも一緒に観たり、そうそうBig Riverも一緒にみてタイに紹介したんだった(笑)。
彼女とはすごくウマが会うし、しかもオフィスではお互い忙しくなかなかゆっくりしゃべる暇がないので、道中の5時間二人はしゃべりっぱなし。せっかくGGのCDを持っていって、物語の説明をしながら聴こうと思ったけど、無理無理。
結果は開演10分前ギリギリについて、トイレに行きながら(笑)作品のプロットをちょろっとしゃべっただけで、Mさんは観劇に望むことになってしまった。
観客席に入ると、そこにはブロードウェイと同じようにGrey Gardensの外観が緞帳がわりに舞台にあって、「をを、TWもがんばってるね、まさかブロードウェイからセットを借りてきたとは思えないし」と感激。
プロローグでLittle Edieの声が聞こえるのだけれど、これがChristine Eversoleそっくり。いや、Christineは実在のLittle Edieに似せたのだろうから、Christineそっくりといっては語弊があるだろう。
外観はブロードウェイのセットとそっくりだけれど、やはり舞台はTWの方が狭いため(特に2幕目のセットが舞台の奥にしまわれていると思われるので、奥行きがない)、2階へと続く階段がかなりはしょられていた。2幕目のセットはほぼ寝室でのシーンが多いため、ブロードウェイ版と同じようだったけれど、プロジェクションはほとんど使わず、キャットフードのあき缶の山、とか観えないので、そんなにたくさん野良猫が住み着いているようには感じられなかった。
演出もブロードウェイ版をほとんどなぞっているといっていいだろう。これには賛否両論があるかもしれないけれど、私はそれでいいと思う。リージョナル公演とはいえ、R&Hやソンドハイム、ウエバーのように何度も上演されているなじみの作品ではないのだし、TWのサブスクライバーでブロードウェイ版を見ている人は10%いるかいないか、だと思うからなにも無理して演出を変えることはない。
ただこれだけは譲れないのは二幕でのLittle Edieの衣装の奇抜さでしょう。
「どうしちゃったの?」と一瞬で思わせる、それこそRevolutionary Costumeでないと、変わり果てたLittle Edieの精神のアンバランスさを観客の意識化に浸透させることは無理。
それなのにセットにお金を掛けすぎちゃったのか(笑)、この肝心の衣装が、ブロードウェイ版に似てはいるんだけど、Close but not cigarで「????」と思わせるほどでもなかった。だからRevolutionary Costume for Todayもほとんど笑いが取れないし、まあプログラムに書いてある解説を熟読していなかったら、一幕でBig Edieを演じていた人が二幕ではLittle Edieなんてよくわからないから、普通の観客は混乱したまま二幕に突入してしまうことは避けられない。
Little Edieが新聞の記事を読む場面で、自分のことをBody Beautifulと言われていた、というところでやっと観客は「え、この人はLittle Edieってこと?」て察するけれど、肝心なこの部分で活舌があまりよくなかったのか(私はちゃんと聞こえたけど)、後ろに座っていた老婦人がでかい声で(笑)「何を言っているのか全然聞こえないわ」といったので「自分が聞こえないからって、周りの人を巻き添えにしないでくれ~」と心の中で言っていた(笑)。
キャストもTWの公演だから粒が揃ってはいる。Beth Glover(この人をAll Shook Upの国内ツアーで観たことあるらしいが覚えていない)がBig Edie/Little Edieを演じていて、彼女は一幕目の方が二幕目よりしっくりしていたと思う。Big Edieが夫からの電報で、自分の華麗なる社交生活は終わった、と悟って、娘の婚約を破棄にさせようと策略するところは、ブロードウェイ版ほどはっかりわからないので、観客はいぶかしく思ったに違いない。
二幕目のBig EdieはDale Soulesが演じていて、彼女はブロードウェイ版でアンダースタディをしていたから、役にしっくりしていた。
Little EdieはElisa Van Duyneで、Erin Davieのお人形のような可憐さ、はかなさはそれほどなかったけれど、歌は安定していた。相手役のJoe Kennedy Jr/Jerryを演じるNicholas Galbraithは二幕目ののらりくらりのJerryはとてもよかったけれど、上流階級のKennedyを演じるにはノーブルさが足りなかった。
George Gould Strongを演じたMichael Wintherは、ブロードウェイのGouldよりゲイさが足りなくて(笑)、歌はよかったけれどBig Edieとのプラトニックな関係が明確にでなかった。
と、まあマイナス点が多い公演だったけれど、友人のMさんはいたく感動してくれてよかったし、彼女はドキュメンタリーもみたい、なんていっていた。それになにより、こういう玄人向けっぽい作品をあえて上演しようという心意気はものすごく評価したい(実際にチケットの売り上げはおもったほどではないようだ)
実はこの公演を見る前に、Christine Evesoleの出ていないGGってどんなだろう、と不安だった。というのももう業界ではCE=GGみたいな位置づけだったからだ。観終わった後に、Christineがいなかったとしても作品としては十分成立する、でも作品が成功するには二幕目の冒頭のナンバーがガッツンと決められる女優が必要だと思う。一幕目で観客がうっすらと感じたLittle Edieのアンバランスなところが、二幕目では思いっきりデフォルメされて出てくるのだから、この精神を病んだ人々の話が求心力をもつには、Revolutionary Costumeのナンバーが面白いお笑いナンバーだけでなく、観客の心をざわつかせるプレゼンテーションになる必要があると思った。(それをChristineがやってのけたから、玄人には受けたのだろう)
オマケ Christine Eversoleのトニー賞でのパフォーマンス
by quast
| 2008-09-03 07:24
| 観劇レポート
|
Comments(2)
Commented
by
butler
at 2008-11-25 08:10
x
クワストさん、こんにちは!
DCは寒い~~!
この寒空の下、日曜日のマチネーをStudio Theatreで観てきました。満席でした。ポスターにはExtended!の貼紙が。
クワストさんのレポを読んで行って、本当に助かりました。
なんせ英語力に問題大ありですから。(笑)
前回のジェリー・スプリンガーといい、本作といい、Studio Theatreのクオリティは高いです!
そうそう、JSのサタンがGouldになってナヨっていました。(笑)
DCの観客、最後の拍手も淡白でスタンディングは数名のみ。
サプライズドのオマケは、実物のJerryが観劇していて紹介されたことです。ずんぐりした単なるオッサンでしたけど。(笑)
Barbara Walshはさすがに良かったですよ。
勿論、二幕目のほうですが。
DCは寒い~~!
この寒空の下、日曜日のマチネーをStudio Theatreで観てきました。満席でした。ポスターにはExtended!の貼紙が。
クワストさんのレポを読んで行って、本当に助かりました。
なんせ英語力に問題大ありですから。(笑)
前回のジェリー・スプリンガーといい、本作といい、Studio Theatreのクオリティは高いです!
そうそう、JSのサタンがGouldになってナヨっていました。(笑)
DCの観客、最後の拍手も淡白でスタンディングは数名のみ。
サプライズドのオマケは、実物のJerryが観劇していて紹介されたことです。ずんぐりした単なるオッサンでしたけど。(笑)
Barbara Walshはさすがに良かったですよ。
勿論、二幕目のほうですが。
0
Commented
by
quast at 2008-11-29 13:12
butlerさん、GGをご覧になったんですね!ところでDCの演出はGouldがゲイだってわかるような演出でした?
ジェリーは実在だったんですか!面白いサプライズでしたね。
次はWSS?もしかして世界一ちっちゃな惨めな人々?レポを楽しみにしています。
ジェリーは実在だったんですか!面白いサプライズでしたね。
次はWSS?もしかして世界一ちっちゃな惨めな人々?レポを楽しみにしています。